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【日記】「いいコラムや小説を書きたいなら、まずブログはやめたほうがいい」

今週のSPA!の福田和也と坪内祐三の連載対談の冒頭に、いきなりこんな見出しがデカデカと(笑)。肝となる部分を引用してみよう。

福田 ネットの文章って、最初に編集者を「ダマす」という行為を通過してないでしょう。学生によく言うんだけど、編集者1人ダマせないのに、読者をダマせるわけがない。プロを目指すんなら、原稿料にならない文章をネットにダラダラ書かないほうがいいね。ネット経由で一発当たる人もいるけど、長くやっていけるとは思えない。トラック・バックといった安い反応を求めないで、じっくり書いたほうがいいと思うんだよね。

紙媒体の「物書き-編集者」という品質管理システムを、ネットの「ブロガー-トラックバック」と対置して、長期的に見た場合、前者の方が優れているというわけですな。これはまあ、その通りでしょう。

坪内 いまでも「テレビコラムニストNo.1」と言えるナンシー関さんも、最初に「消しゴム版画家」としてデビューしたときから、テレビに対する批評眼は持っていたんだよ。でも、中途半端に表現しないで、ずーっと見続けて、あるとき堰を切ったようにテレビのコラムを書きはじめるわけじゃない? いまは、ポテンシャルが貯まる前にネットで簡単に書いちゃうから、半端に手慣れてしまう。

最近こんなニュースもあったけど、あえて形にしないで練り上げるか、こまめに書いて腕を磨くか。これはどちらが良いとは一慨には言えないと思う。書くことでしか成長しない人はいるだろうし、長く書き続けることでしか得られない経験値もあるだろう。それに、「じっくり待つ」「ポテンシャルを貯める」という発想が、「処女作を一行も書いてない小説家志望」なんて悲惨な人種を増やしているような気もするし(笑)。
ただ、書き過ぎるために内容が薄くなるという問題は確かにあって、例えばブログでデイリー数百ヒットのアクセス数を維持しようとすれば、最低でも週2、3回は更新しなければならない。一週間も放置すればアクセス数はガタ落ちですよ。つまり、ブログでは更新頻度がそのままメディアとしての影響力に結びついているんですな。そうなると、自分でもしょぼいと分かりきっているエントリーを、客を逃がさないために公開することになる。このドツボにハマって、能力はあるのにつまらないエントリを量産しているブログは少なくない。だいたいさ、20代の若造に書くネタがそうポンポン見つかるわけがないんだよ。ソースとなる人生経験が圧倒的に少ないんだから。中身スッカラカンな駄日記がはびこるのは、書き手の意識というよりはメディア環境の構造的な問題でしょう。
そういうワケで、僕はRSSリーダーの普及に期待している。ちょっと更新を停止しただけでアクセス数が激減するのは、ブログをブラウザから閲覧している人が多いからだ。気に入ったブログを「お気に入り」に登録しても、数日更新がないと飽きて「お気に入り」から除外してしまうのだろう。しかしRSSリーダーならば、更新された時だけチェックに行ける。これが広く普及すれば、遅筆なブログでも更新時にはアクセスが殺到するので、月イチでクォリティの高い文章を公開するというスタイルも定着するのではないだろうか。
ちなみに、あえてエントリを玉石混合にすることで更新頻度を上げるという手法もあって、これを上手く駆使しているのが切込隊長だ。ガチガチの経済評論と2ch並の一発ネタが交互に繰り出されるかのブログは、頻繁な更新を迫られての苦肉の策が、逆にメディアとしての個性に昇華された感すらある。「一行で面白いエントリー」と「長文で読み応えのあるエントリー」、この両刀を使い分けられれば更新頻度もクォリティも落とさずに済むというわけだ。

坪内 ブログは基本的に閉じたファミリーの関係で成り立ってるから、シンパか、あるいは敵しか存在しない世界。そこが気持ち悪いんだ。だってSPA!のこのページにしても、敵でも味方でもない"中間"にほとんどの読者がいるわけじゃない? だからこそ「これに関しては支持するけど、これに関しては支持しない」とか、その時々で読者の反応が違ってくる。だから面白い。

確かに、ブログのコメントでは「部分評価」はあまり見かけない。テキストを総括しての全否定か全肯定かに二分され、ある部分では正しいことやおかしなことを書いていても、文章全体の印象に流される傾向にある。
これはブログのようなインタラクティブなメディアでは、参加者の「立ち位置」がまず問われるからだ。そこで問題になるのは「敵か味方か」。書き手と読者が断絶されている紙媒体と違って、ブログのコメント欄では書き手と読者の間に対等な人間関係が発生する。そのため、コメント欄はブロガーへの態度表明を行う場になりがちであり、曖昧な「部分評価」は敬遠されるのだ。もちろん、「脊髄反射するアホが多い」というのも大きな要因の一つではあるのだが(笑)。
いずれにしろここで指摘されているのは、ブログでのコミュニケーションは既存の作者と読者のそれよりはるかに貧しい、という事実だ。書き手と読み手がこんなにも接近したというのに。皮肉な話である。

基本的に「他者とのコミュニケーションが書き手を育てる」というのは、昔も今も変わっていない。ただ、「編集者の赤入れ」や「ファンからの手紙」がトラックバックとコメントに置き換わったことで、何かが失われる。それが今後現れてくる「ブログ世代の物書き」を特徴付ける要素となるのだろう。まあ、そんなものが本当に出てくれば、の話ではあるが(笑)。

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» 基本的には同意だね [昼サイブログ]
【日記】「いいコラムや小説を書きたいなら、まずブログはやめたほうがいい」ただ、ブログを止めたからって(・∀・)イイ!コラムや小説や漫画が書けるように なるとも思わないんだよね(^_^;) 多分きちぢさんがHPやブログに手を出さないのもこの理由何じゃないかなぁ? ... [続きを読む]

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